公開:2026年4月16日

15分で読めます

LLM利用率80%への道筋 ピクシブが実践した「People・Process・Technology」開発環境の三位一体の変革とは?

2026年2月、GitLabは「Developers Summit 2026」に出展しました。本イベントにてスタッフ・リージョナル・マーケティングマネージャー川口 修平が、ピクシブ社のプロダクト開発ギルド Unit Leadのbash様と講演をおこないましたので、本記事にてその模様をレポートします。本講演ではピクシブ社がLLM利用率80%を実現した道筋について、川口がbash様からお話を伺いました。

2026年2月、GitLabは「Developers Summit 2026」に出展しました。本イベントにてスタッフ・リージョナル・マーケティングマネージャー川口 修平が、ピクシブ社のプロダクト開発ギルド Unit Leadのbash様と講演をおこないましたので、本記事にてその模様をレポートします。本講演ではピクシブ社がLLM利用率80%を実現した道筋について、川口がbash様からお話を伺いました。

スタッフ・リージョナル・マーケティングマネージャー川口 修平スタッフ・リージョナル・マーケティングマネージャー川口 修平

ピクシブ社とは

  • 創作プラットフォーム「pixiv」を中核としてさまざまな創作活動を楽しむための事業を展開
  • 社員数約400名で、そのうち開発者は約230名、エンジニアは約170名

GitLabとは

  • GitLabとは、AIネイティブDevSecOpsプラットフォーム
  • GitLabは100ヵ国以上100,000以上の組織、5,000万以上のユーザーが利用

GitLabとは

GitLab社とは

  • 2,000名以上の従業員(66ヵ国以上)
  • オールリモート企業(世界中にオフィス無し)

Beyond the code時代へ ピクシブ社のなかで起きている変化とは?

Developers Summit 2026のテーマは「Beyond the Code」です。LLMの性能向上により、ソフトウェア開発における定型作業の自動化など、バックオフィスやプロダクト開発の現場での、業務が最適化されています。

そうしたなかで、ピクシブ社ではどのような変化が起きているか伺いました。

「現在のエンジニアリングにおいて、単にコードを書き出す作業(タイピング)の価値よりも、その背後にある設計思想や『なぜそれを作るのか』という思考の価値がより高まっています。

・背景をどう読み取り、なぜそのアプローチを選んだか
・ほかにどんな選択肢があり、なぜそれをしなかったか

という思考プロセスが、より重要になってきています。

ピクシブ社内にエンジニアギルドという組織があり、そこでそういったプロセスを大事にすることを2018年から行なってきました。少し先手を打てたかなというところがあり、これに沿って成果を上げようとしています。」

LLM利用率80%を実現!ピクシブが実践した「People・Process・Technology」三位一体の変革とは?

LLM利用率80%を実現!ピクシブが実践した「People・Process・Technology」三位一体の変革とは?ピクシブ社プロダクト開発ギルドUnit Lead、bash氏

ピクシブ社のこうした変化は、まさに「Beyond the Code」を体現したものです。このような変化に対応する際に避けて通れないのが「自分たちがまず変わること」だと思います。

けれど人は成功体験があったり確立されたプロセスがあったりすると、簡単に変わることはできません。そこで紹介したいのが、「People(人)、Process(プロセス)、Technology(テクノロジー)」というアプローチです。これは、まずTechnologyを抜本的に変え、それに合わせてProcessを整備し、それに応じてPeopleが変わっていくというアプローチになります。

「People(人)、Process(プロセス)、Technology(テクノロジー)」

GitLab社には、この変革実現アプローチでLLM時代に対応しているお客様が多くいらっしゃいます。ピクシブ社でも、同様のアプローチにてLLM利用率80%を達成されたとのことです。実際、どのようにして進められたのかをbash様に伺いました。

3つの要素が螺旋形に絡み合いながら進化してきた

「我々の変革は線形に進んできたわけではありません。それぞれの要素が螺旋形に絡み合いながら進化してきました。

たとえば新しい技術を選定すると、人の行動が変わります。それに合わせて仕組みも変わってきて、そうこうしているうちに、次の新しい技術やバージョンが進展し、さらに変容するといった感じです。こういった相互作用を生み出しながら動いてきたのが実際のところです。

こうした変革の成果として、LLM利用率80%・社内満足度90%・活用意欲向上95%を達成しました。」

3つの要素が螺旋形に絡み合いながら進化してきた

ピクシブ社のLLM利用率80%という成果は、従業員各自が勝手にLLMを使ったというデータではありません。会社が決めたLLMを会社が決めたルールに沿って使った成果であり、そう考えるとLLM利用率80%というのは非常に素晴らしいです。

ここからはLLM利用率80%という成果を、People・Process・Technologyという3つの観点でどう達成されたかを伺います。

Technologyの変革 | GitLab Ultimate有償版の導入へ

Technologyの変革 | GitLab Ultimate有償版の導入へ

まずはTechnologyの変革について、bash様に時系列で教えていただきました。

「まず2013年にGitLabをGUI付きGitサーバーとして導入しました。2024年に大きな転換点がありGitLab Ultimateを導入し、SDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)をEnd to Endでカバーする基盤として本格的に整備を開始しています。

また、セキュリティスキャンや開発のバリューストリームの可視化などを実装し、それと両輪みたいなかたちでLLMの活用も開始しました。」

GitLabを選定した理由

次にGitLabを選定した理由について伺いました。

「ツールチェーンvsプラットフォームがひとつの論点になりました。そのなかでツールチェーンと比べGitLabならコストを圧縮できるうえ、ライフサイクルを一貫して全体最適を狙いやすいという結論が出たのです。

ブラックボックス的なベンダーロックインにならないこともポイントでした。そのほか、セルフマネージメントで、必要に応じバッチをあてたりバージョンアップしたりできるという柔軟性も決め手になっています。」

GitLab導入によるツールチェーンの解消

GitLab導入によるツールチェーンの解消

GitLabを選定いただく理由として、ツールチェーン解消というポイントはよく挙げられます。そこで、ツールチェーンを運用するなかでの苦労について、bash様に伺いました。

「エンジニア個人としては、ツール選びは楽しいですし自分にフィットする良いものを選びたいという気持ちはあります。そういったジレンマと戦う必要がある点が苦労ですね。

組織レベルに引き上げて考えると、ツールチェーンに含まれるプロダクトはたくさんあります。これらをそれぞれで選定していると、契約上のスケールメリットが乏しくなるのです。小口契約ですと既成プランしか選択肢にならず、大口だとできるような大きな相談ができなくなりますからね。

また社内で使うツールのフラグメントがあると、メンバー異動が大変だったり、キャッチアップが難しかったり問題がどんどん出てきます。実用の苦労としては、個人・チームレベル・組織全体の最適が少しずつずれてくるという点がありますね。

さらに、ツールチェーンでやるといろいろ選べるので、ところどころ入れ替えが難しい。意図せぬシャドーIT化だったり、外部ソリューションに頼るべきところを自分たちで作り込んでしまったりといった問題も発生します。」

反対にプラットフォームのメリットについてうかがったところ、bash様は次のように話されました。

「全体最適を追求しやすかったり、組織レベルでマクロの成果を見定めやすかったりする点が魅力ですね。ここで鍵となるのが人です。人をプラットフォームに寄せる必要が出てきて、ここが重要なポイントであり難しい点ですね。」

GitLab Ultimateを導入しセキュリティ対策に着手した背景

GitLab Ultimateを導入しセキュリティ対策に着手した背景

次にGitLab Ultimate導入によるセキュリティ対策に着手した背景について、bash様に伺いました。

「安全性・堅牢性を高めるためセキュリティが重要なのはもちろんですが、開発ライフサイクルとしても、インシデントはペースを乱す要素です。我々の開発体制は、運用とばらばらではありません。

プロダクトを作って運用して、動かして維持してというのをホールチーム体制で続けているので、インシデントは開発時でも重要なイシューです。コードpush時のCIでは防げないサプライチェーンアタックや、外部要因で突然脆弱性が問題になることがあります。こういった問題を回避し、ホールチーム体制での開発継続性を大事にしたかったのです。」

GitLab Ultimateを活用したピクシブのセキュリティ対策

LLMの利用にあたって、セキュリティ脆弱性は重大な課題になります。IPAが毎年出しているレポートによれば、「2025年の企業におけるセキュリティ脅威 Top10」の第4位が「システムの脆弱性を悪用した攻撃」でした。またLLMが生成したコードについては、その45%に脆弱性が含まれているという調査もあります。

こうしたなかで、ピクシブがどのようなセキュリティ対策を行っているか伺いました。

GitLab Ultimateを活用したピクシブのセキュリティ対策

「いろいろあります。マージリクエストを実行する際、常に機械チェックをかけています。あとメインブランチを常にリリース可能な状態にしており、そこにあるソースコードに対し常にセキュリティスキャンをかけている状況です。ほかにもIaC構築や権限分離、レビュー・テスト・ライブラリ管理・アップデートなど、基本的な対策を忠実に行っています。

ただ、セキュリティは果てのない戦いなので、もう大丈夫とかもう十分な水準ということはありません。日々、改善し続けるためみんなで頑張っているという状況です。」

ピクシブが行っているのはリリース前のセキュリティスキャンだけ(DevOps+Sec)ではありません。開発サイクル全体でセキュリティスキャンが常に行われている状態(DevSecOps)です。

このように堅牢な体制があるからこそ、ピクシブでは自由にできる面もあるとのことでした。具体的に、どのようなことを自由に行えているのかbash様に伺いました。

「たとえば開発者が自分にとって使いやすいIDEやツールを選べるように、複数の選択肢を設けています。また業務用PCも、ベンダーもスペックも自由にアレンジできる制度を長く運用している状況です。全体最適化を狙いつつ、各個人にあったツールを使っていこうという裁量の幅も設けています。」

Processの変革 | ①組織体制の整備

Processの変革 | ①組織体制の整備

次にProcessの変革についてbash様に伺いました。

「まず組織体制の整備は欠かせません。LLM活用の取り組みは経営層と連携し、全社的に行わなければなかなか進まないと思います。各組織がそれぞれ単独で頑張っても難しいので、CTOの牽引力がキーとなり組織として横断的に推進する体制を整えました。

開発サイクル全体でみるとCOE(Center of Excellence)を設置し、プロダクトを横断する関心事として進めています。LLMについては、組織の技術推進という文脈で専任部署が中心となって取り組みを進めた感じです。

トップダウンでガイドラインを示し、LLMを活用しようというメッセージを出しました。一方で現場は自律的に、現場に即したものをどんどん活用し盛り上げています。トップダウンとボトムアップの両面から、推進しているという感じですね。」

Processの変革 | ②SDLCの整備

「Processの変革について、2点目はSDLCの整備ということで、開発サイクルの健康診断を実施しました。パフォーマンスチューニングにプロファイリングが必要なように、『計測なくして改善なし』です。

その結果、わかりやすいボトルネック工程があったわけでなく、複合的な問題が複数見つかりました。それに合わせた次の取り組みを考えていこうという状況です。」

bash様がお話しされた「開発サイクルの健康診断」というキーワードは、まさにGitLabの特徴を表しています。GitLabは、開発サイクル全体のデータがひとつのプラットフォームに集約されるので、その一元化されたデータに基づいた生産性の可視化をすることができます。この可視化された生産性に基づいて開発サイクルの健康診断を実施されたとのことでした。

Processの変革 | ③評価制度の整備

「Processの変革について、3つ目は評価制度の整備です。特に新しい評価制度を作ったわけでなく、生産性指標を評価に使うなという話はずっとしています。

これはよくあるアンチパターンとして、生産性指標を評価に用いることでうまくいかなくなるというのはよく聞いていました。うまくいかないことをペナルティと捉えてしまったりとか、『なぜそうなったか』を詰めたりするのは本当によくありません。

生産性指標はあくまで改善のための情報であり、人を評価査定するための道具でないとはよく言っています。」

Processの変革について最後に、社内で好意的に受け止められたかをbash様に伺いました。

「好意的というか『うまくいったらいいね』と、温かい目で見守ってくれた感じです。

私としても、これがみんなの飛びつくような高関心領域になるとまで期待していません。ただ『ちょっと手間をかけるといっぱいいいことがある』という風に思ってもらえたら上々だな、と考えています。」

Peopleの変革 | ①Whole Teamカルチャー醸成

最後にPeopleの変革についてbash様に伺いました。

「ひとつ目は『Whole Team』カルチャーの醸成です。ひとつのチームとしてプロダクトに関する責任を持つことで、職種や役割を超えた相互支援ができます。

品質・セキュリティ・パフォーマンスなど、推進担当の仕事にしてしまうのでなく、自分たちの仕事という意識をもつのです。そうしてCoEがそれを支援する、というのを前提にします。」

Peopleの変革 | ②LLMの性能を最大化する環境への配慮

「次に、LLMを開発を支える強力なツールと捉え、性能を最大限に引き出せるよう、情報の整理の仕方(コンテキストの渡し方)を工夫することです。これまで人間が読むための情報としてまとめてきたコンテキストを、これからはLLMも読みやすくしなければならないという風に考え方を転換します。そうしてコンテキストを、LLMが処理できる組織知としての情報にするのです。」

Peopleの変革 | ③強い意志と責任感

「3つ目は強い意志と責任感です。『LLMがこう出力したから』は理由になりません。自分の責任として『なぜ』を突き詰めるのです。

前述したエンジニアギルドというところの活動で、『なぜそれをするのか』を考える習慣をエンジニア全員に頑張って根付かせてきました。こういった活動も役立っているなと思います。」

採用について工夫していること

入ってくる方にどういった素質があれば、ピクシブのこういった環境に適応できるのでしょうか。bash様に採用で重視する点を伺いました。

「ミッションへのコミットメントをベースに、組織・事業・プロダクト・システムなどみんなで作っていくことについて大事にしていますね。」

ピクシブが目指すBeyond the code時代におけるあるべきエンジニア像とは?

ピクシブが目指すBeyond the code時代におけるあるべきエンジニア像とは?

最後にピクシブが目指すBeyond the code時代におけるエンジニア像を伺いました。

「エンジニアとはエンジニアリングを行う職種で、エンジニアリングとは、再現可能なプロセスを確立して継続することだと考えています。

確かにコードを書ける能力は重要で、我々もエンジニアに求めるところです。エンジニア職といっても、インフラエンジニア、社内ライフエンジニア、開発エンジニアなどたくさんの役割がありますが、コードを通じて対話をする基礎能力は、どのエンジニアであれ役割であれ共通です。

もちろん全員が常にコードを書くわけではありませんし、役割ごとに業務も違います。ただし問題をどう解釈しどんな手段で解決するか、という判断基準は共通であるべきです。なぜそれをしてなぜほかのやり方を取らなかったのか、を説明する責任はどのエンジニアにもあります。

コードを書かないことの先にあるものを、今まで大事にしてきました。今後もそれを大事にして、まぐれ当たりでない再現可能なプロセスを積み重ねていく本質追求の姿勢が、エンジニアにとって重要だと考えます。」

まとめ

本講演ではピクシブがLLM利用率を48%から80%へ、わずか1年で拡大させた変革の全体像をお話いただきました。ピクシブは、Technology、Process、Peopleという3つの要素を三位一体で変革してきたとのことです。

Technologyの変革ではツールチェーンをGitLabに統合し、プロセス全体にセキュリティを組み込むなどしてLLM活用の土台として整備しました。

Processの変革では経営と連携し、全社プロジェクトとしてCOEを立ち上げたとのことです。そうしてソフトウェア開発ライフサイクル全体を可視化し、守るべきガイドラインを示し、そのうえで評価制度を整備しました。

最後にPeopleの変革では、Whole Teamカルチャーを醸成して、ひとつの目標を共有して全員で助け合う文化を根付かせたとのことです。そうしてLLMの性能を最大化するための配慮をしました。

ピクシブでは、この3つを変革することで、Beyond the code時代の変化に対応していったということです。今回のお話が皆様のヒントになれば幸いでございます。

ノベルティのシールノベルティのシール

生産性のオーバーヘッドを極小化する開発支援ツール戦略を加速。お客様事例:ピクシブを読む

ご意見をお寄せください

このブログ記事を楽しんでいただけましたか?ご質問やフィードバックがあればお知らせください。GitLabコミュニティフォーラムで新しいトピックを作成してあなたの声を届けましょう。

フィードバックを共有する

今すぐ開発をスピードアップ

DevSecOpsに特化したインテリジェントオーケストレーションプラットフォームで実現できることをご確認ください。